カンボジア⑤ – アンコールワットの日の出とカフェ巡り、シェムリアップでの退屈で平和な2週間の生活

旅の記録

シェムリアップで泊めてくれていたラクスミーの家を出て、バッタンバンから一緒に移動してきたイギリス人のRと街の中心地近くのホステルに移ることにした。
一人で滞在していたドイツ人のKを呼んで3人で同じ場所にチェックインして、それから数日は自転車を借りて、何をするともなく3人で街をふらふらと見て回った。
Kは一人でいるときに既にアンコールワットを見に行ったというので、俺達もあえて急いで行こうとは思わなかった。

シェムリアップ近郊にある、東南アジアで最大の湖であるトンレサップ湖周辺にいくつかあるフローティングビレッジにも足を伸ばした。
シェムリアップの街からは少し距離があったが、どうせ時間を持て余していたので自転車で1,2時間かけて行くことにした。
街からまっすぐ南に向かうだけだから迷うことはない。

街を抜けると辺り一面に田園風景が広がっていて、相変わらす日差しは暑かったが、風を切って走るのが気持ちよかった。
途中でスイレン畑の中にあるレストランで昼食を取った。
屋根をヤシの葉で覆われた小屋がいくつもあって、中にはハンモックまで備え付けてあった。
俺達の他には誰もいなくて、食事を終えた後ハンモックに揺られていると、そのまましばらく眠ってしまった。

再び走り出すとすぐに小さな町に着いた。
家屋は高床式、というか斜面に建てられていて、一番高所の道路から湖側にかけて段々と柱が長くなっている。
この日は水位が低かったのか、湖の底に突き刺さる家々の柱がすべて見ることができた。

そのまま進んでいくとフェリー乗り場があり、横には道路が続いているように見えたが、警備員にこれ以上先はフェリーに乗らないといけないと言われた。
フェリーの料金は乗船する人数によって変動するようで、どちらにしても観光地価格だった。
乗船するのに他の人を待つ気もなかったし、何より小綺麗なフェリー乗り場が気に食わずそのまま引き返すことにした。
いわゆるフローティングビレッジならここに来るまでに見られたから、今更お金を払う気にはなれなかった。

翌日はついにアンコールワットへ向かうことにした。
アンコールワットのあるアンコール遺跡群に入るには入場料を支払う必要がある。
アンコールワットという名前だけが有名だが、遺跡群自体は東京23区くらいの広さがあるらしく、すべて見て回るのはかなりの時間とお金がかかるだろう。
入場のチケットは1日券(37ドル)、3日券(62ドル)、7日券(72ドル)の三種類で、3日券と7日券の日程は連続している必要はない。
3日券は10日間、7日券は一ヶ月間有効で好きな日程を組んで利用できる。

どのチケットを買うとしてもとんでもなく高いが、カンボジアと聞いてほとんどの人がアンコールワットしか思い浮かばないように、この入場料とビザの費用くらいしか外貨を得る手段が無いんだろう。

金のない俺とRは1日券を選び、一日一ドルで借りている自転車で日の出から日の入りまで丸一日を使って見て回ることにした。
アンコールワットの東にある、スラ・スランと呼ばれる人口湖の遺跡で日の出を見るため、早起きして自転車で遺跡へ向かった。
シェムリアップからアンコールワットへ続くメインの道路を外れて走っていたが、遺跡の近くでは警備員に呼び止められてチケットを確認された。
チケットを買わずに行く人も多いのか、その後ほとんどどの遺跡の前でも警備員がいて通る人全員をチェックしていた。

スラ・スランで見た日の出は素晴らしかった。
辺りは目覚め始めた鳥の声だけが響き、湖面には淡い光と対岸の木々が静かに映し出されていた。
日が昇るまではTシャツ一枚ではまだ肌寒かった。
それを見越してか、ポットに入れたコーヒーを地元のおばちゃんが売り歩いていた。
なんとなく分かっていたがもちろん砂糖入りだ。
Rとコーヒーを飲みながらたばこを吹かして、辺りが明るくなるまでぼうっと色が変わっていく空を眺めていた。

日が昇りきってからは、自転車を走らせて可能な限り多くの寺院の遺跡を見て回った。
メインのアンコールワット寺院は夕焼けのときに行こうと最後に取っておいたが、結局夕暮れ時に行くとちょうど目の前で閉館して建物の中には入れなかった。
カンボジアの国旗にも描かれている有名な建物自体は見られたし、似たような遺跡はもう飽きるほど見ていたので気にならなかった。

アンコール遺跡群を見終えると、本当にシェムリアップですることがなくなった。
翌日からは朝起きてホステルのプールで泳ぎ、適当にご飯を食べてからカフェで夕方まで過ごす。
そんな風に一切観光せずにゆっくりとシェムリアップを堪能した。
コロナ禍からまだ回復しきっていない街は観光客が多すぎず、静かで過ごしやすかった。
何日かかけて沢山のカフェを回った結果三人のお気に入りを見つけてそこに通うようになった。
何度も通うとお店の人とも顔見知りになって更に過ごしやすくなった。

振り返ってみると、シェムリアップでの思い出は荘厳なアンコール遺跡群の景色よりも、雑多だが静かで過ごしやすかった街の様子が記憶に残っている感じがする。

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