ホーチミンへ急ぐため、一泊してろくに観光もせずニャチャンを後にした。
街を背に海辺を南下していると、次第に雲が切れ、太陽が顔を出し始めた。
気温も上がり始めて、これ以上レインコートは必要無さそうだ。
Tシャツと水着に着替え、サンダルに履き替え再び走り出した。
太陽の熱と湿った空気が肌を撫で、まるで12月とは思えない陽気だった。
ムイネーはニャチャンから約200km、ちょうどホーチミンとニャチャンの間に位置し、ホーチミンから日帰り観光も可能な距離だ。
平均気温が27℃と冬も暖かく、ニャチャン同様、海辺のリゾート地として知られている。特に、砂丘があることで有名だ。
ここまで南下してくるとホーチミンはもう目と鼻の先。
ハノイから2週間で2000km近くを運転してみて、最初は不安だったが、走ってみれば案外どうということもなかった。
バスに轢かれないかだけ気をつけておけばいい。

北部のハノイやサパでは天気の悪い日が多く、ほとんど日焼けしていなかったため、久しぶりの日差しを浴びて、ムイネーに着く頃には顔からつま先まで真っ赤になっていた。
砂丘は太陽の熱をたっぷり蓄えていて、裸足では歩けないほど熱くなっていた。
偶然、俺が行った場所が観光地ではなかったのか、砂丘を独り占めできて景色も良かった。
場所によってはバギーに乗れたり、様々なアクティビティがあるらしい。

砂丘を越えて進んでいくとすぐにムイネーの街が現れた。
海沿いの道からは、海岸でパラグライダーやサーフィンを楽しむ大勢の人たちが遠目にも見えた。

今回はどうせ一泊だからと、俺は初めて、この付近で一番安い宿を予約してみた。
普段はブッキングドットコムとアゴダ、ホステルワールドで探して、設備やレビューなどを比較して大体3番目か4番目くらいに安いところに泊まっている。
もちろん価格は安いほどいいのだが、そういう場所は異常に不衛生だったり、働いている人やゲスト間でのコミュニケーションがなく雰囲気が悪い場合が多い。
宿泊費が地域最安値ということは、施設側は設備投資がしにくいし、ゲストも宿探しにおいて価格を最優先事項として見ているから、ホステルでの体験を重視せず他のゲストとコミュニケーションを取ろうとしない人が多いと感じる。
ムイネーで泊まったホステルは、俺のこの仮説を確信に変えることになった。
到着して中に入ると、ロビーには誰もいなくて、予約サイトに書いてあった連絡先に電話しても誰もでなかった。
しばらく待っているとロビーの横にある部屋からスタッフが出てきた。いや居たんかい。
案内された部屋は6人部屋で、自分を含めて4人が泊まっていた。
誰も目すら合わせず、挨拶しても頷く程度の会釈しかされなかった。
床は荷物とゴミが散乱していて、不快な臭いがする。
バスルームのドアは破壊された跡があり穴が空いていて中が見えるし、鍵もかからなかった。
本当に寝るためだけに存在するような場所だ。

安いのでもちろん設備には文句を言うべきじゃないが、俺が気に入らないのはそういう場所に泊まっている人たちのパターンだ。
挨拶すらしないし、何より場所を共有している他のゲストに対する気遣いを感じられないことが多い。
同じ部屋のゲスト同士でコミュニケーションがないと、外出している間や寝ている間に何か盗まれるんじゃないかと不安になる。
もちろん今日もバックパックはベッドの柱に縛り付けて鍵を掛けておいた。
世界中の言語に色んな挨拶の言葉があるのは、それがそれほど大事だからだ。
特に様々な国の人が集まるホステルのような場所では、相手のためにも笑顔で元気に挨拶しようと思った。
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