ベトナム⑥ – バイクで縦断②(ドンホイ・フエ)

フエの風景 旅の記録

ニンビンを背に今日も国道1号線をひたすら南下する。200km走り続けてヴィンに着いた。
今日もまた何度かバスの巨体がすぐ脇を掠めていった。

ヴィンは40万人規模のそれなりに大きな都市だ。観光地としての喧騒は皆無でどこも地元の人達で賑わっている。
バイクを停められる安宿を探すのに苦労して結局ホテルの個室に落ち着いた。
久しぶりの個室は最高だった。
部屋のドアを閉めた瞬間安堵のため息が漏れた。ふかふかのダブルベッド、自分だけのトイレとシャワールーム。荷物だって全部床に投げ出してベッドに飛び込んだ。
ドミトリーに疲れたらたまには個室に泊まるのもありだな。

ヴィンのホテル

しかしヴィンはあまりにも都会すぎたし、ここでやりたいこともない。
2日間も個室に籠るのは、贅沢に感じてどうにも落ち着かないし、翌朝再びバイクに跨りドンホイに向かうことにした。

ヴィンからドンホイは200km程の距離で、ニンビンからヴィンへ移動したときと同じくらいの距離だ。
200kmという距離は俺の心と体の余裕を保つのにちょうどいい。
国道1号線は走りやすいし何よりガソリンスタンドがどこにでもあるのでガス欠の心配がない。
休憩を挟みながら5時間で目的地のドンホイに到着した。
人口は10万人程で小さいが小さすぎず、海に面していて落ち着いた雰囲気の街だ。

ドンホイの街を流れる川
ドンホイの街を流れる川

バイクを停められるホステルを見つけてチェックインすると、ドミトリーの部屋で日本人のNさんと出会った。彼もホーチミンを目指し、北から南へとバイクを走らせているという。
ラオス北部からベトナムに入り、国境の町でバイクを買ってサパ、ハジャンを周りハノイを通ってここまでやってきたらしい、俺とほとんど同じルートだ。
Nさんは39歳。初めての海外旅行らしく、トルコから入り、初めは物価の安い東欧を回っていたが、やがて西ヨーロッパで資金をほとんど使い果たして東南アジアに辿り着いたらしい。
日本を出国した当初は全く英語が話せなかったらしいが5ヶ月でかなり習得したそうだ。
話しているところを見ると確かに文法はかなり無茶苦茶だが彼のシンプルでストレートな表現は万人に通じるし、特に相手もあまり英語を話さない場合はむしろ理解しやすいだろう。
それに人懐っこい笑顔と飾らない人柄が相まって行く先々で友達を作っているようだ。
彼を見ているとコミュニケーションの本質は言語というか言葉じゃないよなと感じる。

意気投合した俺達は一緒に中部の古都フエへ向かうことにした。
翌日出発前にNさんに俺のバイクの点検をお願いした。
日本でバイクを3台も持っているらしく、整備にも精通している彼はすぐにタイヤの空気圧が低いことを見抜いた。このままじゃバーストの危険性があるという。

途中どこかでバイク屋に寄って空気を入れることにして、折角だからその後フエに着くまでにどこかで観光することにした。
ドンホイとフエの中間地点には「ヴィンモクトンネル」と呼ばれるベトナム戦争時代の地下道がある。ホーチミン近郊の「クチトンネル」ほど有名ではないがその歴史的価値は高い。
立地的に観光客がアクセスしにくいからあまり知られていないのかもしれない。

ドンホイを出発するとすぐに雨が降り出してきた。
ハノイやニンビンでは運転中ずっと太陽に肌を焼かれていたのに、年末の時期のベトナム中部では雨が多いらしい。

経験豊富なNさんに先導してもらいながら雨の中を走った。
雨粒と排気ガスを顔面に受けながら彼のスピードについていくのに必死だった。
急いでいないのになぜそんなにスピードを出すのか聞いてみたら答えはシンプルだった。「バスに追いつかれないようにするためだ」と。
ゆっくり走って追い越されるよりむしろ安全らしい。一理ある。

ヴィンモクトンネル
ヴィンモクトンネル。スマホのフラッシュライトが無いと何も見えない。

ヴィンモクに着いても雨は降り続いていた。観光客はほとんどいない、俺達の他には2,3人しか見かけなかった。
粘土質のトンネルは雨でぬかるんでいて、設置されている照明は1つも点灯していなかった。
トンネルは左右だけでなく下にも分岐していて真っ暗で巨大な迷路のようだった。
一人だったらきっと入らなかっただろう。しかし整備されていない、恐らく当時のままの姿が逆に貴重な体験になった。
引き返すのは諦めて、滑るように進んでいくと急に開けた海岸の出口に着いた。
悪天候のせいで荒れ狂った、決して美しいとは言えない海を、しばらくの間二人で無言で見つめていた。

ヴィンモクトンネル出口の海岸

トンネルに引き返すと戻れる気がしなかったので、海岸からぐるっと回って、住宅のある方から入口に戻ってきた。
施設内にある資料館も見て回ったりして2時間くらい過ごした後、再び雨の中を走り出した。
なんとか日が沈みきる前にフエに到着して、早速宿にバイクを置いて夕飯を食べに街へ出掛けた。
Nさんもフォーは食べ飽きたらしく、白人旅行者だらけのイタリアンでピザを食べた。
その時はじめて明日がクリスマスだと気づいた。

フエは世界遺産の街でベトナム最後の王朝の王宮がある。ベトナム中部ではホイアンと並ぶメインの観光都市だろう。
しかし僕は年末をホーチミンで過ごしたい。31日までのあと6日で1000km走らなければならない。
フエでの観光は諦めて明日はホイアンへ向かうことにした。Nさんもホイアンで友人と会う予定があるという。
俺たちはもう少しだけ一緒に走ることになった。

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