Eが明日ハノイから日本へ飛び立つため、Mと三人でハジャンからバスで帰ってきた。
Eがホーチミンから乗ってきたスクーターがまだハノイの駐輪場に置きっぱなしだという。
ホステルに張り紙をしたり、Facebookマーケットに出品していたらしいが売れなかったらしい。
ずっとハノイを離れてたし、そりゃ売れないだろう。
お前たちなら友情割で100ユーロでいい、彼がそう言うので俺は2万円で買い取ることにした。
ユーロは持っていなかったし、ちょうど日本円も残っていて彼も日本に行くから都合が良かった。
オフロードみたいな道も多かったハジャンを3日間運転したことで少し自信がつき、俺もバイクでホーチミンまで行ってみようと思った。
どこで故障するかは分からないが、壊れたらそこからはバスや電車で進めばいい。
ハジャンからのバスは夜のうちにハノイに到着し、そのまま3人で旧市街に飲みに出かけた。
早朝までバーで過ごし、タクシーで空港へ向かうEを見送った。
別れ際に次はフランスか日本で会おうと約束した。

Eと別れ、その日の朝からMとハロン湾のツアーに出掛けた。
二日酔いと睡眠不足で体調は最悪だった。
ハロン湾はハノイの観光地で最も有名な場所の一つだ。
もともと全く行くつもりはなかったが、ハノイの街はもう十分見て回ったし、せっかくだから、と無理に行くことにしたのだ。
ハロン湾の地形はユニークで、景色は素晴らしかったが。
しかしどこもツアー客であまりに混雑しすぎていて、サパやハジャンほど自然を満喫できなかった。
ハノイからのアクセス性も考えると人が集まるのは仕方がない。
翌日の早朝、Mは電車で南へ向かうと言って旅立っていった。
俺は体調を崩していたのでそのままハノイに留まって体を休めることにした。
その日はずっとホステルのベッドに籠もっていたが、Eからフランスの薬をもらったのを思い出して飲んでみたら午後にはすぐに調子が良くなった。
Dolipraneという薬で、彼曰く症状に関わらずしんどかったらとりあえず飲んでおけばいいらしい。ただし絶対に一日に二錠以上飲むなと言われた。
調べてみると成分はパラセタモールで、日本では同じ有効成分でアセトアミノフェンという名前で知られている。カロナールとかに入っている解熱鎮痛剤だ。
で、このフランスのDolipraneというやつはその有効成分の量が尋常でなく、なんと1000mgも入っている。日本で一般的な成人向けの容量は大体300mgだから三倍以上入っている。
体調が不調から普通に戻るんじゃなくて一気に快調にシフトする感じがして、これは普通じゃないと体で感じた。

体調が一気に回復し、翌日出発することにして、置きっぱなしにしていたバイクを市内の駐輪場へ取りに向かった。
バイクは125ccのホンダ製でスピードメーターは壊れていて動かないし、ODOメーターも8万キロを過ぎたところで止まっていた。
ODOメーターが壊れてからどれくらい走っているのかは分からないが、走ってみたところ異音は無いしエンジンに問題は無さそうだ。
シート下の収納に入っていたヘルメットはおもちゃみたいに軽かった。多分ほとんど帽子みたいなもんだろう。
そういえばベトナムなどの東南アジアではGrabというUberのような配車サービスが人気で、車だけでなくバイクのタクシーが呼べる。
かなり安価なのでハノイ滞在中に何度も利用したが一度もヘルメットを渡されたことはなかった。

翌日昼頃に出発して、ハノイから南に100kmほどにあるニンビンへ向かうことにした。
100kmなら2、3時間で行けそうだし、初日としてはちょうどいい距離だと思った。
初めにハノイの街を出るまでは交通量は多かったが、慣れてしまえば流れに乗るだけなので怖くなかった。
紫外線と排気ガス対策で、サングラスを掛けてマスク代わりに鼻から首までをスカーフで覆っていたから、現地の人にも俺はベトナム人にしか見えなかっただろう。
街を抜けると一気に車の数が減ってかなり運転しやすくなったし、スピードも出せるようになった。
ベトナム南北を繋ぐ国道1号線を走っていたからか、道は予想していたよりもかなりしっかりと舗装されていて陥没穴につまづいて転ぶような心配はなかった。
路肩は砂っぽかったりするところもあるが、まっすぐ進む分には怖くない。
途中何度もバスとトラックに跳ね飛ばされそうになったが約2時間で無事にニンビンのホステルまで辿り着いた。
日本では基本的にバスとトラックは遅くて、乗用車が追い抜きすることがほとんどだが、なぜかベトナムではそれが逆になっていた。
片道一車線の道でも平気で車線を超えて追い抜いていくし、こちらが気をつけていないと対向車線からはみ出してきて正面で突っ込んでくる。
道路上では弱者であるほど優先される、なんて甘い考えはここには無いようだ。

夕飯はフォーの気分じゃなかったので、東南アジアでよく見るファストフードチェーンのジョリビーでフライドチキンを食べた。
店内でアイルランド人の女性と会って話を聞いてみると彼女はインドから東へ日本へ向かっているという。
ヨーロッパから東へ日本へ向かっている彼女と、日本から西へヨーロッパへ向かっている自分がベトナムのジョリビーで交差していると思うと、なんか面白かった。
ホステルで日本人の女性とも会って、明日は彼女とニンビンを観光することにした。
ここには二泊して、明後日南に200kmにあるヴィンという街に向けて出発することにした。
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